「あは。いっぱいします?」

名作まとめ

220: :2006/04/11(火) 08:39:17 ID:

その年の彼女とお婆さん伴っての帰省は中止になった。 
婆ちゃんが彼女の事をおばさんに話したのを気に病んで体調崩して寝込んでしまってたし、 
おばさんが実家に彼女が居ると知ったら何かしてくるかも知れないと、親父が不安がって。 
おかんが婆ちゃんの体調を理由にして彼女に謝って。彼女は残念がってたけど、 
「お大事にってお伝え下さい。」婆ちゃんはそれ聞いて、ずっと泣いてたと聞いた。 
婆ちゃんは本家のおばさんと歳近くて仲良かったから、一番辛い思いしたと思う。 
俺がおばさんを納得させる事が出来ていたらそんな事もなかったし、 
おばさんが孤立してしまうような事も無かった筈で。何もできなかった自分が情けなくて。 
彼女には内緒で俺だけで朝一の電車乗って、晩に間に合うように帰る手筈で実家に帰った。 
婆ちゃん見舞って。謝られて。泣かれて。気にしてないよと話して。就職の報告して。 
親父とおかんにも謝ったけど「お前が謝ったらいかん。」怒られて。彼女を守れと強く言われて。 
親父が仕事で必要になるから携帯買って、電話は止めろと言った。そここまでしなくてもと思った。 
まだ、おばさんも時間経って落ち着けば理解してくれて、元通りになれるんじゃないかと思ってて。 
でも「あの子の耳に入る事が無いようにだ。」そう言われると、従うしかなかった。 
彼女が帰ってくる時間に何とか間に合って。家で何事も無かったかのように装ってたけど、
「お帰り。」言って座ってたら、横来ても座らずに、膝立ちで頭に手乗せて。撫でられて。 
「どして?」「なんとなくですけど。」何かおかしくて。「逆じゃね?」「たまには。」 
多分平静装いきれてなくて。婆ちゃんの事だけでなく他に何かあったと、気付かれてて。 
どんな意図だったかは解らないけど、とにかく優しい手で。されるがままになってたら、 
軽く頭抱えられて。よしよし。完全にそんな感じで。泣きそうになって。 
「いいですよ。」彼女の言葉に首振ったけど、そのままでいてくれて。何とか我慢できて。 
彼女の優しさは嬉しかったけど、かなり反省した。この子に気遣われたらいけないなと。 
どうにか前向いて進める精神状態に戻せて。試験勉強にもやっと、力入れられた。

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222: :2006/04/11(火) 09:01:19 ID:

帰れなかった年末年始は、彼女とお婆さんの部屋で一緒に過ごした。 
部屋暖かくして。こたつ入って。テレビ見ながら、年越しそば食べて。ごく普通の年末。 
「ゆるい正月やね。」ぜんざい用の栗剥きながら、お婆さんが言ったのが印象に残ってる。 
近所の神社で学校の友達と合流して初詣、そのまま新年会の約束してて。彼女も一緒で。
入院の後くらいから、見舞い来てくれた何人か彼女と仲良くなって。集まりにも呼ばれだして。 
女の子達は俺と同年齢か少し上だから、彼女にはお姉さん的な感覚で世話やいてくれて。
今思えば、学校以外は殆どの時間を俺かお婆さんとしか過ごしてないってのは、普通じゃなくて。 
人と会って話す機会が増えたのは、教育上?いい事だったのかなとも思う。 
でも結構いらん事も吹き込んでくれて。困る事もあって。と言うかそれを楽しまれてて。 
酒入ってくるとだんだん話題がやばい方向になる事があって。新年会がまさにそれで。 
一番広い部屋住んでたやつの所に集まって部屋飲み、あとは自由って感じの新年会で。 
俺が男二人と鍋の後始末やってる時に、彼女が何人かに部屋連れ出されて。 
戻って来てすぐ脇に来た彼女、顔赤くて。妙に近くて。これは何かあったなとすぐ解って。 
でも今聞いたらやばいと何か直感的に感じて。そのタイミングでは聞かずにいた。 
色々やってて、彼女の瞼が落ちだしたのが四時くらいで。俺らは先抜けする事にして。 
タクシー呼ぼうとしたら「勿体ないです。」彼女が言ったから、距離あるけど歩く事にして。 
不意に彼女に手を繋がれて。外ではあんまりしない事だから、ちょっと戸惑って。 
「さっき、何話した?」「はい?」「部屋出たとき。」「あ、う。え、えっと。」異常に動揺して。 
「ん?」「え、あは。お兄ちゃんとどこまで進んでるのかとか。」あのバカ共はと。 
さすがに呆れてたら「でも、ちゃんと、まだ何もして貰ってないって言いましたから。」 
ほてった顔で一生懸命言った彼女だったけど、その答えもまた問題アリで。笑えてきて。 
多分今頃、いい酒の肴にされてんだろうなとか思いながら、彼女の歩調に合わせて歩いた。 
人並みの欲はあったけど、彼女を対象にする事は物凄い悪のように感じてて。歯止めになってた。 
結局「お兄ちゃん」と言う立場に安住してた頃だと思う。彼女は不満かもしれなかったけど。
223: :2006/04/11(火) 10:09:30 ID:

乙です。 
書き込みありがとーです。 

ワクテカしながらゆるりと待つのも 
いいものだなという今日この頃でございますです。

226: :2006/04/11(火) 14:08:38 ID:

41氏、乙です。 

親戚のおばさんがあは嬢と彼女のお婆さんに直接。。。って展開にならずに良かった。 
でも親父さんや41氏のお婆ちゃんの心労を思うと心が痛いです。 
あは嬢は本当にいい娘だ。 
最後にあった 

「お兄ちゃん」と言う立場に安住してた頃だと思う 

二人のこれからを暗示している言い回しに、深いものを感じて魅かれた。

228: :2006/04/11(火) 15:05:37 ID:

41氏のお婆ちゃんと彼女のお婆ちゃんとおばさんが 
ごっちゃになってストーリー噛み砕くのが大変だったw 
229: :2006/04/11(火) 15:47:36 ID:

>>228 
41氏の祖母は→婆ちゃん 
あは嬢の祖母は→お婆さん 

41氏は丁寧に書き分けてる、基本だけど芸細ですな。

290: :2006/04/18(火) 00:08:41 ID:

卒業試験と就業研修。肩で息しながら何とか走りきった感じ。ギリギリっぽいけど合格貰えて。 
卒業と資格取得と就職決定。親父に報告したら、突然引っ越すように言われた。 
アパートの持ち主が変わって土地が売りにだされるとかで、退居の要請が親父の方にあって。 
敷金返還と引っ越し費用の負担の他に生活準備金?だったかを提示されてて。 
親父は揉めるのも面倒だと感じてて。俺も無駄に時間取られるのは嫌だったから、 
急な事だし住み慣れてたから残念ではあったけど、あのアパートを出る事にした。 
彼女にその事話したら「…また遠くなっちゃいます?」予想通り、不安げな目向けられて。 
「近くで探すよ。」初めからそうする気だったから、普通に言ったら安心してくれて。 
彼女が休みの日に、一緒に不動産屋行って。まず市営から近いと言う条件で探して貰って、 
その中から俺でも払えそうだった家賃の物件を抜き出して。彼女に「決めてよ。」言って。 
「私がですか?」「いいよ好きなとこで。」「決めちゃいますよ?」「頼むよ。」 
買い物にせよ何にせよ、何かを選ぶ事が苦手で。あのアパートに住むようになったのも、 
学校に近い物件探して貰って一番最初に出てきた所が予算に合ったからと言うだけだった。 
結果的にはその適当さのおかげで彼女一家と出会う事になった。不思議な縁だと思う。 
時間かけて彼女が選んだのは普通の小さなマンション。いつも目にしてた建物だった。 
部屋見たら小綺麗で。南向きで明るくて。家賃はちょっと高めだったけど、すぐ決めた。 
またバイト先でトラック借りて引っ越し。本以外の家財道具は増えてなかったから一度で済んだ。 
市営に近くなって徒歩で数分。お婆さんも心強いと言ってくれたし、良い選択だったと思う。
行き来が楽だから夜もギリギリまで居るし、一端風呂入りに帰ってまた来たりで。 
お婆さんも一緒に食事するようになったけど「ここは寝るだけかね。」そんな事言って笑って。 
「同棲の為の引っ越し?」一人暮らしには広いからか、部屋見に来た連中に言われて、 
毎日家に帰ってるから同棲じゃないけど一緒にいる時間長いから半同棲。勝手にそんな判定をされた。 
もう一緒にいる事が普通だったから、誰がどう言おうと、どうでも良かった。
291: :2006/04/18(火) 00:09:36 ID:

時間がないです。ごめんなさい。
292: :2006/04/18(火) 00:29:06 ID:

少し変な流れになったけど、 
回復の兆しキタ(・∀・)!! 
自分のペースでどぞー、楽しみにしてます>>41
385: :2006/04/25(火) 02:48:11 ID:

正式に採用決まって。新年度からの勤務も決まって。俺の配属された場所は高齢者棟。 
仕事始めまで少し日数があったから、ギリギリまでバイトは続けさせて貰って。 
最終日に送別会やって貰って。社長さんからは就職祝いまで貰って。気持ちよく送りだして貰った。 
四月の頭からは病院での勤務。その職場は女性の方が圧倒的に多くて。体力腕力期待されて。 
殆どリフト扱い。でもバイトで担いでた物よりは軽くて。体力的なきつさは全く無くて。 
休みは不定期になったけど夜勤がある分休日の日数自体は多くて、自由になる時間も増えて。 
けど何もしなくていい日と言うのが学生の時は殆ど無かったから、ちょっと暇を持て余した。 
彼女は中三。進路の問題が再燃した。俺もお婆さんも彼女の説得はもう諦めてて。 
彼女が就職したらできる限りの事はする。もうその位しか考えられなかったけど、 
親父に「楽観的すぎる」と切り捨てられて。説得出来ないと言ったら、暫くぶりに怒鳴られた。 
「お前が投げてどうするんだよ。あの子に何が出来るんだよ。」返す言葉がなかった。 
親父は九歳で父親亡くして。上のお兄さんの力添えがあって定時制高校と国立大学出た人で。 
自分と似た境遇の彼女を、その頃の自分に重ねてた部分はあったと思う。必死な声だった。 
おかんが彼女と話してだいぶ進学に傾いて。俺と行った職安で結構長く求人票漁った。 
中学出てすぐの女の子が就ける仕事は限られていて。働いても得られる給料はたかがしれてて。 
家族二人の生活を成り立たせる事は難しい。その現実を改めて見て知って。少し落ち込んで。 
「フツーの生活って、難しいですね。」働いて、給料貰って、それで生活すること。 
それが彼女の言う普通の生活。あの頃の彼女にはとても難しい事だった。 
彼女は生活保護受けてる事を凄く嫌がってて。その立場から早く逃れたくて、就職を急いでいた。 
生活保護イコール貧乏とお母さんの死。彼女の中ではそんな方程式が成り立ってて。 
普通の生活がしたい。その願いが焦りを産んでいる状態。俺にもそのくらいは感じ取れた。 
部屋いる時の彼女は、俺の膝乗ってきたり、背中にくっついたりで。静かに悩んで。 
何か言葉かけようにも、出来ない雰囲気で。結局撫でて。自分の不安をごまかした。

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