272:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/24(木) 22:18:06.98ID:DX2dcY/Q.net
息子さん…死んだのか。俺はまるで身内が死んだかのように心に深い感情を抱いた。
ジジイ「…湯冷めすんな。上がるか」ザバッ
パシッ
俺「…湯冷めでいい。続き。話して下さい」
これが俺のジジイに対しての最初で最後の敬語だ。ジジイは驚いていたがまたすぐに笑って
ジジイ「風邪引いたらお前のせいじゃけえな」
とまた湯船に浸かった。
273:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/24(木) 22:21:19.60ID:DX2dcY/Q.net
ジジイ「息子は12で死んだ。西暦だと…1982年だな」
ジジイ「あの時はよおく覚えてるわ。マイケルジャクソンがスリラーを出したんじゃ」
いきなりのことに何のことか分からなかった。マイケルのスリラーは俺でも知っていたが…
ジジイ「連日ゾンビの映画が流れたな。俺はな壊れたかもしれんかった」
ジジイ「…ゾンビでいい。息子を返してくれ。俺もそしてゾンビになるから」
ここはよく覚えている。余りにも悲しく切なかった。俺はもう熱いものをこらえられなかった。
274:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/24(木) 22:25:05.25ID:DX2dcY/Q.net
ジジイは俺の涙に気付いていたのか気付かなかったか。まあ気付いていただろうな。それでも話を続けた。
ジジイ「酷かったのはよしのだった。あいつは息子の名前をただ呼ぶのみ。見てられなかったわ」
ジジイ「…それでも俺は仕事をした。息子を忘れたかったんだろう」
ジジイ「それからだんだんよしのも立ち直った。戦争後の日本を支えた二人だからな。やわじゃあない」
275:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/24(木) 22:30:34.21ID:DX2dcY/Q.net
ジジイ「時代は俺らを置き去りに進んだ。その間も多くの生徒から慕われた。俺は幸せじゃった」
泣き続ける俺。なんてジジイに声をかけよう。そんなこと思えなかった。ただジジイに同情した。
ジジイ「よしのが還暦になった年よしのは病気になった。もう助からん。そう言われた」
俺「…は?」
ジジイ「よしのは余命半年と言われた。今から思えばあの医者はヤブじゃな」
ジジイは笑った。
277:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/24(木) 22:35:52.85ID:DX2dcY/Q.net
ジジイ「よしのに俺はよくギターを聞かせた。ブルースじゃあねえ。イーグルスとかドゥービーとかだ」
イーグルスもドゥービー(ブラザース)もほとんど知らなかった。
でも今なら…なるたけ明るい、気さくな音楽を届けようとしていたのが伝わる。
ジジイ「あいつはスタンド・バイ・ミーをよく歌えと言った。あげな簡単なやついくらでも聞かすわw」
笑ってはいるが、もはやジジイも、限界だった。
ドゥービー・ブラザーズ (The Doobie Brothers) はアメリカ合衆国のロックバンド。1971年のデビュー以来、解散時期を挟みながらも現在まで第一線で活動し続ける人気グループ。1960年代後半から1970年代まで、アメリカ音楽界で大きなムーヴメントとなったウェストコースト・ロックを代表するバンドのひとつ。デビュー以来3,000万枚以上のアルバム・セールスを誇り[1]、1979年のシングル「ホワット・ア・フール・ビリーヴス[2]」でグラミー賞を受賞。2004年にボーカル・グループの殿堂入りを果たした。https://ja.wikipedia.org/wiki/ドゥービー・ブラザーズ
279:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/24(木) 22:40:40.72ID:DX2dcY/Q.net
ジジイ「よしのは…よしのは余命半年ながら3年も生きた。俺が還暦の誕生日、あいつは死んだ」
ジジイは泣いていた。俺も泣いていた。浅い湯船に湯を増やすかの如く涙は流れた。止まる気配もない。止める気も…無かった。
ジジイ「…すまんな。こんな…」
俺「いいから…続けろ」
ジジイ「ふん!」
手で顔を拭った。ジジイはやっぱり若く見えた。
280:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/24(木) 22:45:53.23ID:DX2dcY/Q.net
ジジイ「周りも良くしてくれた。特に生徒は花束をよくくれた」
ジジイ「でももう…そこにはおれんかったわ」
ジジイ「それで…ホームレスや」
俺「おかしいだろ。別にホームレスなる必要ないじゃろ」
ジジイ「…よしのはほとんど東京から動いたことが無かった。だから俺は使命を感じたんじゃ」
ここで使命という言葉を使ったのをよく覚えている。もう12年も前なのになw
281:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/24(木) 22:48:57.44ID:DX2dcY/Q.net
ジジイ「俺はよしのに日本を見せるんじゃ」
ジジイは涙を流しながら笑った。俺は少しおかしくて、笑った。
俺「あんなに叩き付けて弾いてええんか?」
ジジイ「アホ、あれは音楽じゃ。しゃあないわ」
俺「…そうか」
言い返しはしない。ジジイがそういうならそうなのだ。
282:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/24(木) 22:52:01.58ID:DX2dcY/Q.net
ジジイ「…そうだ」
ジジイはもう泣いてなかった。顔をバシャバシャさせて、俺に聞いた。
ジジイ「お前、あのめくらの娘、好きか?」
いきなりの問いに俺は本当に溺れるかと思った。なんで五十鈴さんを?この流れで?
ジジイの目は…また真剣だった。
283:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/24(木) 22:57:36.43ID:DX2dcY/Q.net
俺「…ああ。好きだ」
ジジイは立ち上がって湯船を出た。そして振り替えって俺を笑った。
ジジイ「…曲を作るぞ」
帰って風邪なんてひかなかった。それから俺は彼女に隠れて初の曲作りをしていた。ジジイはとても、とても嬉しそうだった。
それから受験が終わった。家から一番近い公立に合格した。まあ別に勉強は出来たしランクも落として受験したしな。親父には不思議がられたが特に何も言われなかった。
284:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/24(木) 23:02:30.72ID:DX2dcY/Q.net
高校では部活を始めた。これは親父との約束だったからだ。入る部活も決められそうになかったからこれも親父に決めてもらった。
そこではいったのは弓道部だった。そこで二人の友達が出来た。音楽のジャンルが結構似通ってたし二人とも楽器をしてたからな。
ぼっちの俺はもういなかった。すげえ嬉しかった。
しかしある時事件が起こった。姉貴にジジイと会っているのを見つかった。
288:名も無き被検体774号+@\(^o^)/:
2016/11/24(木) 23:47:43.56ID:fvJuAyv3.net
イッチーブラックモアにわろた
リッチー・ブラックモア(Ritchie Blackmore, 本名:Richard Hugh Blackmore(リチャード・ヒュー・ブラックモア),1945年4月14日 – )は、イギリス出身のギタリスト。アメリカ合衆国在住。ミドル・ネームがハロルド(Harold)と表記されることも多いが、誤りである。身長179cm。「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のギタリスト」において2003年は第55位、2011年の改訂版では第50位。2016年、ディープ・パープル名義でロックの殿堂入り。
https://ja.wikipedia.org/wiki/リッチー・ブラックモア
313:名も無き被検体774号+@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 21:35:14.11ID:FVaEeH7f.net
姉貴「…なにしてんの?俺?」
正直いつもの公園ならばれないと思った。トレーニングの為にランニングを始めた初日だったらしい。
ジジイは全然動じてはいなかった。
ジジイ「おりょ?知り合いか?俺」
一方の俺は汗だくだった。姉貴は怒るとメチャクチャ怖い。さらに親父はもっと怖かった。二人とも普段は温厚なのに怒ると怖いんだ。それは今も変わらない…
315:名も無き被検体774号+@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 21:37:21.61ID:FVaEeH7f.net
姉貴「どうみてもホームレスでしょ?なにしてんの?」
俺「…ギターを」
姉貴「聞こえない。はっきり喋って」
ジジイは笑っていた。
俺「ギターを教えてもらってた」
俺と姉貴の尋問は続いた。
姉貴「…いつから?結構前からなんでしょ?」
316:名も無き被検体774号+@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 21:39:17.79ID:FVaEeH7f.net
俺「えーと…1年くらい前から」
姉貴「1年!?受験だったのに!?」
ジジイはまたガッハッハッと笑った。俺はそれどこじゃない。
俺「で、でも高校はちゃんと受かったし」
姉貴「ランク落としてたでしょ!」
俺「…」
317:名も無き被検体774号+@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 21:42:22.18ID:FVaEeH7f.net
ジジイは立ち上がって姉貴の肩を叩いた。姉貴はすぐその手をはたいた。
ジジイ「ふーん。姉ちゃん、楽器は?」
姉貴はとても冷たい目をして言った。
姉貴「関係ないでしょ。近づかないで」
ジジイよりも俺のほうがぶちギレそうだった。
俺「あのさ、ギター教えてもらった、いわく先生なんだよ。失礼すんなよ」
318:名も無き被検体774号+@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 21:45:31.60ID:FVaEeH7f.net
姉貴「うるさい。家に帰るよ。その人も一緒だよ」
ジジイは気にせずまた座ってギターを手に取った。俺は内心焦った。親父の元に連れてかれるのは勘弁だったからだ。
ポロロン…
俺「あっ…」
ジジイはリトル・マーサを弾き出した。五十鈴がよくしていたので覚えていた。
姉貴「…うま」
この時だけ少し姉貴の目が優しくなった。でもすぐに俺を向いて
姉貴「行くよ」
319:名も無き被検体774号+@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 21:49:13.67ID:FVaEeH7f.net
俺「…お、うん。じゃあジジイ頼むよ」
ジジイはふうっと溜め息をついてしゃあないわと立ち上がった。
そうして3人で重い足取りで家に行った。ジジイは俺の家が見えると俺にいい家だなと呟いた。それに誰も返事を返さない。
家に入ると親父はコーヒーを飲んでた。姉貴はすぐに親父に向かって話した。
姉貴「こいつホームレスなんかにギター教わってたから高校のランク落としたんだよ!」
320:名も無き被検体774号+@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 21:53:03.02ID:FVaEeH7f.net
明快にしかも単刀直入に切り出した。親父はゆっくりこっちを見て「なんだと?」と言った。ドスが効いてて凄く怖かった。
だけどすぐに親父の態度が変わった。驚いた顔でこっちに来た。
親父「…ジジイ、先生?」
俺と姉貴は頭に?を浮かべて親父を見つめた。ジジイも誰だか分かってない様子だった。
親父「やっぱりだ!先生でしょう、ゼミの親父ですよ!」
321:名も無き被検体774号+@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 21:55:36.06ID:FVaEeH7f.net
ジジイはまだ覚えていないふうだった。それに見かねて親父は本棚をガタガタいじって1冊の本を出した。
親父の大学のアルバムだった。
親父「ほら!これですよ!」
ジジイ「うーん…ああ、親父君か!久しぶりだなあ」
親父「…お久しぶりです!」
そういって親父は泣き出した。親父が泣いた回数はホントに少ない。だからとても印象深い。姉貴もそうだった。
323:名も無き被検体774号+@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 22:01:28.54ID:FVaEeH7f.net
ジジイ「何も泣くこたあねえじゃねえか。久々じゃ」
親父「だって…旅に出たと聞いて、それで」
親父は涙のせいでポツポツとしか話せなかった。俺も姉貴もどうしていいか分からなかった。姉貴が気をきかせて全員テーブルにつかせた。
ジジイ「親父、おかんさんと付き合ってたろ?どうなった?」
笑ってジジイはおかんの名前を出した。俺が4つの時に死んだおかん。いや母さんと言ってた…気がする。
325:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 22:05:43.28ID:FVaEeH7f.net
親父「おかんさんは…結婚出来ましたよ?10年少しに亡くなりましたけど」
ジジイは少し悲しい顔をした。ジジイは一言「そうか」とだけ。
親父「約20年ぶり?ですかね?」
ジジイ「お前いくつだ?」
親父「42です」
ジジイは親父の肩を叩いてまだ若いわと笑った。
326:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 22:09:59.21ID:FVaEeH7f.net
親父「その肩を叩くのも懐かしいです」
親父はやっと涙が止まった。姉貴がそこで切り出した。
姉貴「…こちらの方は?」
親父が言った。
親父「俺の大学の先生だ」
姉貴は意外という顔をしてジジイを見た。俺は親父がジジイの教え子という事実に驚いたがそれよりは嬉しかった。
親子2代で同じ師をもつという不思議な感覚。そのことに喜んでいた。
327:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 22:13:28.16ID:FVaEeH7f.net
親父「それで…俺よ」
俺「へ?」
親父「どこで知り合った?」
いきなり飛んできた矢に俺はドキドキしながら今までの経緯を説明した。時々ジジイが補足をしつつこの1年と少しの説明をした。
親父はそれを真摯に聞いてくれた。時々へえやほうなど相槌をうちながら。どこか俺の話を羨ましそうに。
328:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 22:17:49.28ID:FVaEeH7f.net
親父「…分かった」
姉貴はもう怒って無かった。それよりギターを聞きたそうだった。
親父「そうだ!ご飯、食べてって下さい!」
そうして初めてジジイと飯を食べ、家の風呂に入り、同じ部屋で寝た。姉貴はジジイが怪しい人間じゃないことが分かるとギターのリクエストをした。
姉貴「私ギターもしてたけど良くできなかったんだよね…」
姉貴「あれ弾きたかったんだよね、オアシスのワンダーウォール!」
329:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 22:20:42.87ID:FVaEeH7f.net
ジジイは笑って俺を見た。
ジジイ「姉ちゃん、それは俺の世代じゃねえなあ。俺、弾けるか?」
俺「…うん、練習したから」
姉貴「え?あんたが?」
姉貴をギャフンと言わせたくて実は練習していたのだ。姉貴がこの曲が好きなのは知っていたから。
ジャラーン
初めてジジイと五十鈴以外にギターを聞かせた。リビング、台所には親父。二人に対してのライブだった。
330:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 22:25:49.57ID:FVaEeH7f.net
姉貴は出来るじゃん!と褒めてくれたし親父は頑張ったなと声をかけてくれた。それだけで俺は何万人からの拍手をうけたみたいな気分だった。
次の日からジジイはまた出ていった。親父は少しの間でもうちで住まないかと聞いたらしいがジジイが断ったという。
それからは普通だった。またジジイにギターを習いにいく。今度は親父に隠す必要は無くなった。時々姉貴もついてきた。
そして俺はバンドを組んだ。弓道部の友達二人とだ。主にドラムの奴のせいでジェフ・ベックをよくした。曲は好きだったがギターは凄く難しかった。
ジェフ・ベック(Geoffery Arnold “Jeff” Beck, 1944年6月24日 – )は、イングランド出身のミュージシャン、ギタリスト[1]。
エリック・クラプトン、ジミー・ペイジと並ぶ世界3大ロック・ギタリストの一人とされ、『ローリング・ストーン』誌の選ぶ「最も偉大な100人のギタリスト」において2003年は第14位、2011年の改訂版では第5位。https://ja.wikipedia.org/wiki/ジェフ・ベック
332:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 22:29:47.04ID:FVaEeH7f.net
それから五十鈴に向けての曲作りもしていた。姉貴も意見をくれた。最初はインストゥルメンタルにしようとしていたがやっぱり言葉が欲しいという姉貴の意見で歌詞をつけることにした。
そして1ヶ月ほどたったある時五十鈴から話を持ち掛けられた。
五十鈴「私ね、ジジイさんに凄く感謝してるの。だから曲をプレゼントしたいなって思ってるの」
思わず吹き出しそうになる。結局、考えることは一緒だったのだ。
俺はバンドでジェフ・ベックを、ジジイと五十鈴に曲を、五十鈴とジジイに曲をという忙しい生活を送ることになった。
337:名も無き被検体774号+@\(^o^)/:
2016/11/26(土) 23:58:53.66ID:dwZ0/p0R.net
親父がジジイの教え子だったなんて凄い偶然があるんだね
345:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/28(月) 21:21:08.97ID:fuLAD+3O.net
それから高校の部活もこなしつつ夏休みになった。
夏休みはよく五十鈴と遊んだ。端から見ればデートだったのだろうが俺はデートにしたかったのだ。五十鈴に内緒で曲を作った。
そしてとうとう出来上がった。つたない、2分半ほどしかない曲だった。内心喜びと不安が同居していた。分かるかな?この気持ち。
曲名は今でも覚えている。というより今も自分のレパートリーだ。
『Hold My Hand』だ。
346:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/28(月) 21:24:26.12ID:fuLAD+3O.net
彼女の家に行き、彼女のお母さんに席をはずしてもらって、手筈は整った。
五十鈴「どうしたの?」
彼女には何もおしえていない。ジジイに向けた曲の練習とも勘違いしていた。
俺「そ、そうじゃないんです。1つ聞いて欲しい…ものがあって」
元来人前で喋るのは苦手だったんだよね。でも1つ1つ振り絞って声を出す。
俺「それで、えーと五十鈴さんのために曲を書いたんです!」
五十鈴「え?」
347:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/28(月) 21:28:13.08ID:fuLAD+3O.net
俺「今年の初めから書き出して、凄い時間かかっちゃったけど、一生懸命作ったんです!」
バリバリに保険をかけてギターを手に取り歌を歌う。
演奏が終わったときには俺は泣きそうだった。ミスしなかった悦び。想いが届いたかどうかの不安。たった数秒でも俺には凄い時が流れた。
五十鈴「…私ね、嬉しい」
そういって彼女もポツリと話し出した。
五十鈴「…好きなんでしょ?私のこと。でもだめ。盲目だから」
348:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/28(月) 21:31:26.56ID:fuLAD+3O.net
俺「え、あと…」
こんな時すらすら言葉が出てくれば。日頃のコミュニケーションが足りない証拠だった。
五十鈴「私も、好きでした。顔は分からないけどずっと優しさは伝わったから」
彼女はゆっくりと、綺麗に喋る。
五十鈴「でもね、苦労する。私は盲目だし妹は多指症。いじめられるよ」
初めて知った事実もあった。彼女の妹は多指症だった。しかも同じ高校というのも後に分かる。
349:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/28(月) 21:34:58.71ID:fuLAD+3O.net
俺「で、でも!ホントに好きです!バカみたいだけど、ホントに好きなんです」
今から思い返してもバカな一言だ。もっとましな返しは出来んのかw
五十鈴「…困る」
俺「?」
五十鈴「諦められないじゃん!」
バンと立ち上がって彼女は大きく後ろに転げた。俺は慌てて寄り添う。
五十鈴「こんななのに!ホントにいいの!?」
気づけば彼女は泣き叫んでいた。俺はただ狼狽えるだけ。自分の無力さを嘆いた。
350:イッチー・ブラックモア@\(^o^)/:
2016/11/28(月) 21:39:07.88ID:fuLAD+3O.net
俺「…はい。大丈夫です。俺が脆いっすけど、ステッキになります」
今でもこの台詞は揶揄される。それだけ思い出深かったのだろう。
彼女はただ俺に抱きついた。結果、五十鈴は年上の恋人になった。
ジジイにその事を話すとパアッと明るい顔になって俺の肩をバンバン叩いた。
ジジイ「そうか!良かったじゃねえか!ちゃんと杖になりやがれよ!」
ジジイはそれからも変わらず二人にギターを教えてくれた。そんな事が永遠に続くと思ってた。本当に。
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