【ネタバレ考察】秒速5センチメートルとかいう鬱屈した新海誠作品

サブカル

「君の名は」で一躍有名になった新海誠の作品を皆さんはご覧になったことはありますか?

言の葉の庭や星を追う子ども、最近では天気の子といった作品がありますね。

そんな新海作品の中で今回取り上げるのは秒速5センチメートルです。

ラッドウィンプスの「前前前世」に乗せた爽やかなストーリーの「君の名は」とは正反対な、ひたすら鬱屈した作品である秒速5センチメートルですが、どこか惹きつけられる面も存在するため人気を集めています。

事実、筆者にとって全新海誠作品の中でもっとも好きな作品です。

本記事では、秒速5センチメートルを他の新海作品と比較しつつ考察していきます。

ネタバレを含むので未視聴の方は注意です!

秒速5センチメートルのあらすじ

まずは秒速5センチメートルのあらすじを確認していきましょう!

小学校の卒業と同時に離ればなれになった遠野貴樹と篠原明里。二人だけの間に存在していた特別な想いをよそに、時だけが過ぎていった。
そんなある日、大雪の降るなか、ついに貴樹は明里に会いに行く……。
貴樹と明里の再会の日を描いた「桜花抄」、その後の貴樹を別の人物の視点から描いた「コスモナウト」、そして彼らの魂の彷徨(ほうこう)を切り取った表題作「秒速5センチメートル」。3本の連作アニメーション作品。

https://www.cwfilms.jp/5cm/story/

簡単に言えば、「初恋を忘れられない男」がその想いを振り切って新たな一歩を踏み出すまでの話。

何処か斜に構えて、現実を直視せず、過去の幻想から抜け出せずにいる主人公ははっきりいって気持ち悪いとも思えるものの、心の奥底でどこか共感できるところがあるようにも感じる不思議な作品です。

新海誠作品の映像美と山崎まさよしの主題歌「One more time, One more chance」が切ない雰囲気の物語を彩ります。

秒速5センチメートルの魅力

©️Makoto Shinkai/CoMix Wave

つぎに、秒速5センチメートルの魅力を紹介します。

秒速5センチメートルの魅力として

・新海作品ならではの映像美
・切ない(?)ストーリー

これらが挙げられますね。

新海作品ならではの映像美

君の名はで有名になった新海誠作品はとにかく映像がリアルで美しいことで有名ですね。

秒速5センチメートルも新海作品の例に漏れることなく素晴らしい映像美を楽しめます。

桜の舞い散る渋谷区参宮橋、雪が降りしきる栃木の小山駅と、リアリティ溢れる映像表現は作品の世界に没頭させてくれます。

切ない(?)ストーリー

秒速5センチメートルは「鬱アニメ」と称されることもあるくらい切ない(?)ストーリーが魅力です。

中学生の頃の同級生である明里を忘れられない主人公貴樹が、彼女の幻影を追い求めながらも葛藤する物語に共感する方もいるのではないでしょうか。

とはいえ、初恋を忘れられず大人になっても引きずるという点でかなりの気持ち悪さを感じる視聴者も多いとのこと。

物語の感想は賛否両論あるところです…笑

秒速5センチメートルの考察

©️Makoto Shinkai/CoMix Wave

秒速5センチメートルの魅力が伝わったでしょうか。

秒速5センチメートルは三部に分かれていますが、どれも30分以下と短く考察の余地が多く残されています。

ここからは、

・「君の名は」と正反対のラスト
・「ほしのこえ」との比較
・踏切のラストシーンの意味

以上4点について考察を進めます。

「君の名は」と対照的なラスト

秒速5センチメートルを視聴した経験がある方は、君の名はのラストを観てついニヤッとしたのではないでしょうか。

両作品は主人公とヒロインがすれ違う場面で幕を閉じる点で共通しています。

秒速5センチメートルのラスト、貴樹は明里らしき女性と踏切ですれ違いますが、明里らしき女性は振り返ってくれませんでした。

対照的に君の名はでは、瀧と三葉が神社の階段ですれ違い、2人はお互いの存在に気づいて再会を果たすのです。

「秒速」の貴樹は中学時代の明里の幻想に囚われているものの、実際に行動に移すわけではありません

たしかに、しばらくは手紙での交流はあったものの最後に会ったのが中学時代であり、相手の生活もあることから今更連絡をとれないというのもわかります。いい大人になって昔の同級生にいきなり連絡を入れるのは簡単ではないでしょう。

それでも、貴樹は行動に移さなかった。明里に会いに行かなかった。明里を幻想の中のものとして自己完結しているだけでした。

一方で、君の名はの瀧は「三葉がいる世界」を守るため、単身で岐阜の田舎に飛び込み彗星の落下から三葉のいる村の住民を避難させます。

命を惜しまず、一人の女の子を守るために身を投げ打って奔走する姿は尊敬に値しますね。

その甲斐あって、瀧と三葉は再開を果たしたというわけです。

我武者羅に三葉の名を呼び続けた瀧と心の中の明里に囚われた貴樹、両者の結果は対照的です。

「ほしのこえ」と遠からず

新海誠作品の中で初の劇場公開作品であるSF作品「ほしのこえ」は秒速5センチメートルと通ずるところがあります。

ほしのこえは異星人からの侵略を受けた近未来の地球を舞台とした作品で、地球を守るべくいわば「地球防衛軍」に選ばれた少女ミカコと地球で暮らすノボルの「距離」を巡る物語です。

思いを寄せ合う中学校の同級生だったミカコとノボルは宇宙空間を隔ててメールのやり取りを続けるのですが、ミカコが所属する宇宙船が地球を離れるにつれ、メールが届くまでの時間が長くなっていきます。

そして、ある日ミカコは戦闘の最中数光年先にワープしてしまい、メールがノボルの元に届くのに8年もかかるようになってしまうのです。

ミカコは、地球に帰還してノボルと再会することを夢見て戦い続けます。

一方ノボルは、ミカコからのメールが途絶え、ミカコがいない日々を生きるのを決心しますが、8年ぶりにメールが届くと、同級生だった頃と思いは変わらないことに気づきます。

そして、時間的、空間的隔たりはあっても「ここにいる」ことを確認し合うのです。

少し長くなりました。

これを秒速5センチメートルと比較してみましょう。

秒速5センチメートルも中学校時代の同級生の貴樹と明里が思いを寄せ合い、その後大人になるにつれて疎遠になります。

そして、手紙でのやり取りだけはしばらく続けいていたという点でほしのこえの類似していますね。

しかし、「ほしのこえ」とは対照的に、明里の貴樹に対する気持ちは過去のものになってしまうというわけです。

「秒速」の第3章で明里が「昔の夢」をみたと回想している点からも明らかです。

ほしのこえでは、ミカコは地球の防衛という責務を負った特殊な状況であったため心の支えとしてノボルを必要としていましたが、明里はそうではありません。

明里は、貴樹との思い出を「過去のもの」として新たな一歩を踏み出しているということですね。

長い時間を経ても二人の想いが「ここにいる」ものであるという「ほしのこえ」とは対照的です。

踏切のラストシーンの意味

秒速5センチメートルのラストにおいて、貴樹は明里が踏切の向こう側にいないのを確認して清々しいとも取れる表情で立ち去ります。

ここで貴樹は、囚われ続けた明里の記憶から解放されるというわけです。

明里らしき女性は踏切の向こうで振り返ってくれる、そのような確信は幻想に過ぎないことに気づき、貴樹の時間も動き出します。

秒速5センチメートルの感想

©️Makoto Shinkai/CoMix Wave

私的な考察を以上でつらつら並べてきましたが、あくまで個人的な見解なのであしからず。

最後に私の率直な秒速5センチメートルの感想をご紹介します。

新海作品の中では一番好み

私は映画化された新海作品を全て視聴してきましたが、正直に一番好みなのがこの秒速5センチメートルです。

というのも、新海誠作品の最大の魅力は男女の不思議な距離感だと私は感じているからです。

過去に囚われた貴樹と、彼を置き去りにして今を生きる明里。

手紙を通して繋ぎとめようとしながらもずれていく二人の時間はどこまでも残酷でもどかしく魅力的です。

「君の名は」や「ほしのこえ」も「距離感」が重要なテーマになっていますね♪

小説版や漫画版では少し違ったラストを楽しめるのでぜひこちらもチェックしてみてください!

聖地巡礼が楽しい

新海作品の魅力はやはり美しい作画。

そうなれば、聖地巡礼のやりがいがあるのも必然です!

「君の名は」でも聖地巡礼が一時期話題になりましたね。

秒速5センチメートルの聖地は主に東京都渋谷区の参宮橋や栃木の岩舟、種子島。

筆者は参宮橋で聖地巡礼をした経験がありますが、この作品がどれだけ精巧にモデルとなった聖地を描画し、なおかつ映像作品として美しく昇華させているか実感しました。

まとめ

いかがだったでしょうか。

秒速5センチメートルをここまでネタバレありで考察してきましたが、新海作品の興味深さが伝わったら幸いです。

秒速5センチメートル以外にも新海作品は名作揃いなのでぜひ視聴してみてください!

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コメント

  1. […] もちログより引用 […]

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