「あは。いっぱいします?」

名作まとめ

106: :2006/04/05(水) 03:08:20 ID:

社会復帰して、徐々に体も慣らして。体重は一ヶ月くらいで元に戻って完全復活。 
卒論仕上げて出席も単位も足りてたから講義とかにも行かずに就職活動に集中。 
どこで就職するかというのが問題になって。親父とおかんにも一応相談はした。 
「まさか帰ってくるつもりじゃないよな。」その言葉で予定通りアパート近辺に絞って探し始めて。 
今思えば物凄く楽観的で。何とかなるだろうとたかをくくって淡々とやってた感じで。 
それでもそこそこ体格のある男と言うのは介護の現場では重宝がられるからか、 
履歴書と健康診断書提出してそれで落ちるなんて事はなかったし、面接の感触も良かった。 
結果、三施設から内定貰って。老健か病院併設のリハビリ施設かで悩んで。 
人を治す仕事に関わりたい気持ちが強かったので、病院の方を選ばせて貰った。 
学校終わって直接うちに来た彼女に報告したら「えっと、どこですか?」勤務地をまず聞いて。 
住所言って、地図見せたら改めて「おめでとうございます。」言ってくれて。 
喜んでくれてるかと思ったら、突然すっと涙流して。えー!?って感じで、慌てて。 
「ちょっと待って、待って、何で?」「あ、えっと…あは。」ペタ座りして、放心して。 
時々「おーい。」とか声かけても「…あは。」力無く笑うだけで。もう、撫でるしかなくて。 
張りつめてる彼女は結構見てたけど、抜けきった彼女を見るのは始めてで、ちょっと意外な顔で。 
帰らないと言ってはあったけど、まだ不安を感じていて。彼女らしく、表には出さないでいて。 
でも就職ちゃんと決まって、安心して。それで一気に、気持ちが弛みきったみたいで。 
彼女が動く気配が無いから、食事作ったりして。食べさせて。やっと少し、戻って。 
「もう大丈夫?」「…です。」「驚いたよ。」「…ごめんなさい。」妙にしおらしい彼女がいて。 
俺の表情伺いながら、何度かためらって。やっと自分から口開いて。 
「えっと。これからも一緒にいてくれるんですか?」まだ少し目に不安さ感じて。 
「そのつもり。」努めて普通に答えたら「つもりって何ですか?」問い詰められて。 
照れくさかったけど「一緒にいてよ。」言わされて。やっと、普通に笑ってくれた。
107: :2006/04/05(水) 03:10:05 ID:

就職内定が十月半ば。早く決まって安心はしたけど、二月からは土日に研修が始まって。 
三月末までには現場に出られるレベルになれなければいらないよと、要するにそう言う事だった。 
卒業試験と学校内の資格試験は勿論絶対に落とせない。そう思ってはいたけど危機感を持てなくて。 
結局バイト中心の生活。仕事して帰ったら彼女がいて。夕食食べて。送り返して。 
「あんたらもう一緒に住んだら?」お婆さんに冗談で何度も言われたけど、さすがに無理で。 
ちゃんと家に帰らせる事が最低限の義務と言うか。守らなきゃならない一線のような気がしてた。 
家の方にも内定決まったと連絡したら、親父は「よくやったよ。」いつも通り、一言だけで。 
後は就職したらなかなか休みも取れないんだろうし、今年は帰って来いよと。それだけで。
長いこと婆ちゃんにも会ってない、自由に休めなくなる。その年は年末年始に帰省する事にして。 
おかんが勝手に彼女と話し進めてから「帰るんなら二人にも来て貰う?」俺に言って。 
一緒に帰る事になりかかってたんだけど、俺の家に本家のおばさんから電話があって。 
久しぶりだったんで就職の事とか学校の事とかちょっと話して。話が彼女の事になって。 
婆ちゃんに聞いたと言って。「可愛い子や言うてね。」言われて照れたら、 
「でもいかんよ。ええほど遊ぶだけにし。」何の事か解らなくて、黙ってたら、 
「親の無いようなのと一緒におったて、出ていく物は全部こっちからになるんやからね。」 
「頃合い見て別れんとね。捨て銭いるようやったら、出すけんね。」受話器持ったまま絶句して。 
嫁は私が探してるとか、暫く街で遊んだら帰って来て本家継げとか、意味がわからなくて。 
「ごめん今日は切るから…。」それだけ言って、とりあえず親父に電話したら、 
「やっぱりかよ。」その言葉で予測出来てた事だと知ったて、事情を聞いた。 
本家のおばさんは父方の親戚筋で、農家。子供も孫も女の子だけで。跡取りが無くて。 
何故か俺に目を付けて、小学校上がる前頃から俺を養子に出せと言い続けてて。 
親父は断り続けてたけど専門学校入ったあたりで「いらん事を」と切れだして。 
更に彼女の事を聞いて、激怒して。帰ってこないのは彼女の所為だという事になってて。 
それ聞いて、俺にはやさしい人だったから、かなりショックだった。
108: :2006/04/05(水) 03:25:11 ID:

急展開にwktk
109: :2006/04/05(水) 03:35:03 ID:

相変わらず乙であります! 
しかし、読めば読むほど、自分の心が痛いのは何故でありましょうか・・・orz
110: :2006/04/05(水) 03:39:04 ID:

>>106-107 
41氏乙です、ずっと待ってました。 

そんなことがあったんですか・・・就職が決まってこれからって時に。 
純粋に悲しいことですね。。。

113: :2006/04/05(水) 07:32:04 ID:

あはを多用し過ぎだな
114: :2006/04/05(水) 07:52:22 ID:

>>113 
だがそれがいい!
219: :2006/04/11(火) 08:37:14 ID:

本家の周辺では、葬式の時に跡取りが最前列中央に座って最初に焼香をする言う習慣があった。 
今は形だけで、一番若い男子がその役。親戚内に男が産まれなくて、俺はずっとその役で。 
でも本家のおばさんだけは決まり事だと言い張り、俺が本家の跡を取るのが筋だと言いだして。 
それが行き違いの最初。俺の知らない所で、親父はずっとおばさんと揉めていた。 
親父が梃子でも動かないから俺を動かそうとして。毎日必ず夜中に電話がかかってきて。 
おばさんは車買ってやるとか、毎月十万小遣いやるとか言って俺を揺らそうとして。 
でも結局言いたい事は「彼女は捨てて帰って来て本家の農家を継いで。」そう言うことで。 
彼女とは別れる気は無いと言っても「子供がでけたらまた面倒増えるのよ。」唖然とした。 
おばさんは俺と彼女が既に男女の関係だと思い込んでて。その部分はいくら否定しても無駄だった。 
俺が「別れません。」としか返事しないと、彼女に弱みでも握られてるのかと言い出して。 
「私が直に話したてあげようか?」勢い込んでたからちょっと強く止めたら、泣かれて。 
「働く言うなら居らしてやってもはええけどそれじゃいけんの?解ってや、家には入れれんのよ。」 
最大限の譲歩のつもりだったんだろうけど、中二の女の子に対して考えるような事じゃなくて。 
キッパリ帰らないと告げると、俺が彼女から離れるならなんでもいいという感じになって。 
おばさんが彼女を汚い言葉で貶めるのを聞くのは、明らかな嘘と解ってても辛かった。 
俺にはおばさんを止める事が出来できなくて。親父にどうにかならないかと泣きついて。 
親父が激怒しておばさんに止めるように言うと、親父とおかんは本家から勘当されてしまった。 
おばさんは、本家と切れると脅せば慌てると思ってたらしいけど、親父もお袋も全く動じず。 
事が思うように進まなかったおばさんは錯乱して、親戚中に電話かけまくって。 
俺が変な女に掴まって家が滅茶苦茶になった、なんて吹聴して。他の親戚が心配してくれて。 
俺や親父に電話したり直に来てくれたりもしたけど、事情話せば理解してくれる人が多かった。 
親戚内で相手にされなくなり、同居してた本家の姉さん夫婦も子供連れて別居する事になって。 
それ以後は、音信すらなくなった。六日間での出来事。全然頭がついていかなかった。

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